こんにちは。
彩人です。
「村上春樹の踊る小人の解説を知りたいな」
今日はこんな方向けに記事を書いています。
僕は年間読書量の1/3が村上春樹。
そんな僕が作品を解説しています。
よろしくお願いします。
・読書ブロガー
・日本大学文理学部卒業
・年間読書量の1/3が村上春樹
村上春樹「踊る小人」の徹底解説&考察&解釈
村上春樹「踊る小人」はどんな作品?あらすじと概要
解説・考察の前に「踊る小人」とはこんな作品です(↓)
- 初出:1982年「新潮」(1月号)
- 収録:「蛍・納屋を焼く・その他短編」(新潮文庫)
またあらすじはこんな作品でした(↓)
僕は夢の中で小人と出逢います。そこで小人から「一緒に踊りませんか?」と言われ、一旦は断ります。
一方、僕は象を作る「象工場」に勤めています。職場の相棒に「踊る小人」の話をすると、第6工程のじいさんが知っているとのこと。そこでじいさんに会いに行きます。じいさんに会い、話を聞くと宮廷で「よくない力」を使ったため、革命が起き、宮廷を追われてしまったとのことでした。
さて昼休み。今度は相棒から第8工程に勤めている女の子の話を聞きます。親しくなりたいと思い、近づくのですが、あいにく提案した日に女の子は「踊り」の予定があるとのこと。
するとまた夢に小人が現れ、女の子を手に入れる作戦を教えてくれると言います。その作戦とは…?
ではここから考察に入ってみたいと思います。
村上春樹「踊る小人」の解釈・解説、徹底考察!
踊る小人の主題は「幻想の崩壊」とされます。
「はじめての文学 村上春樹」のあとがきでは、こう説明されています(↓)
「最後の方に生々しくグロテスクな描写がある。僕はこのように幻想の裏側にある激しい暴力性や、避けがたい腐敗や救いのない崩壊振りに強く心を惹かれる」
文藝春秋「はじめての文学 村上春樹」より引用
つまりあることをきっかけに全ての物事が崩壊。
その崩壊とは、グロテスクかつ暴力的だということを描きたかったのかもしれません。
実際この物語でも多くのものが破壊しました(↓)
- 小人
- 女の子
- 象工場の仕事
いろんなものが消え、
結局のところ、小人の言ったことは正しかった。僕は今、国中の官憲から追われている。
村上春樹「踊る小人」P124から引用
こんなラストで終わっています。
主人公が築いたものは、小人の登場によりあっけなく崩壊してしまいました。
象工場や革命の意味は何だろう?
では「象工場」や「革命」とはなんだったのでしょうか?
「革命」についてはこんな記載があります(↓)
- 「革命が起こり、皇帝は殺され、小人は逃げた」(P103)
- 「それでもやつらは踊る小人を探しておる。しかし小人と革命の間にどんな関係があるのかはわからん。噂話しかない」(P104)
ただ、この革命は小人が「良くない力を使った」から起きたとされます。
どんな「力」なのかは、あまり説明されていません(↓)
「しかし噂によると小人は宮廷で良くない力を使ったということだ。そしてそのせいで革命が起こったんだという説を唱えるものもおった。」
村上春樹「踊る小人」P104より引用
ただ、良くない力を使ったため革命が起こり、追われる羽目になったことがわかります。
ちょっとしたことで「物事は変革し、崩壊する」ことの隠喩かもしれません。
続いて「象工場」とは一体なんだったのでしょうか?
象工場については、「象工場のハッピーエンド」という作品でこう述べられています(↓)
「僕は昔から、なぜか(なぜだろう?)ほんものの象を作るという作業に、深い興味を持っていて、どうやったらうまく作れるのだろうと、ずいぶん真剣に考えたものだった」
こんな理由からか、村上作品にはたびたび「象」が出てきます。
村上春樹自身が象に興味があることから登場したようです。
村上春樹「踊る小人」最終的には何を言いたかった?
では、この「踊る小人」で村上春樹は何を言いたかったのでしょうか?
それは、
- 現実や夢は簡単に崩壊してしまう
- 形あるものも形ないものも、あっけなく消えてしまう
ということを言いたかったのではないでしょうか。
実際、「象工場」「女の子」もあっけなく消えてしまいました。
またこの「現実世界」も死んでしまえば全てなくなります。
いくら富や財産、名誉を築いても最終的には「無」になりますよね。
つまり「現実や幻想は儚い」ということを言いたかったのではないでしょうか?
まとめ
いかがでしたか?
僕は他にも村上作品をいくつか考察しています。
良かったらそちらもよろしくお願いします!
ではまた!