村上春樹

村上春樹「図書館奇譚」考察と徹底解説!【主題から羊男まで検証】

こんにちは。

彩人です。

図書館奇譚、よくわからなかったな〜

図書館奇譚の詳しい解説が知りたい!

今日はこんな方向けに記事を書いています。

僕は年間読書量100冊の内、1/3が村上春樹。

そんな僕が解説しています。

よろしくお願いします。

あやと
あやと
著者・彩人プロフィール
・読書ブロガー
・日本大学文理学部卒業
・年間読書量の1/3が村上春樹

村上春樹「図書館奇譚」の考察と徹底解説!

解説の前に「図書館奇譚」の簡単なおさらいです。

「図書館奇譚」とはこんな作品でした(↓)

  • 1983年刊行
  • 本編を元にした本が4冊存在する
  • デパートの機関紙「トレフル」に連載

また図書館奇譚のあらすじは、こんな感じです(↓)

あらすじ

「僕」は図書館に本を返しに行きます。すると親切そうなおじいさんから「ここで本を読んでいかないか?」と声をかけられます。「僕」は一旦は断るのですが、老人の説得に根負け。図書館の地下室へと案内されます。

地下室へ行くと1ヶ月以内、そこに閉じ込められるという罠にはまります。その間には本を丸ごと1冊暗記し、脳みそをちゅるちゅる吸われるとのこと。

地下牢では羊男と美少女が訪ねてきます。

そして1ヶ月後。「僕」は羊男と共になんとか図書館を脱出。その後、家に帰りました。しかし母親は図書館に行っていたことは叱らず。そんな母親も最後は亡くなってしまいました。

こんなあらすじでした。

本ブログは、

  • 「図書館奇譚」(新潮社版・カットメンシック挿絵)
  • 「カンガルー日和」収録の「図書館奇譚」

2冊を参考に書いています。

よろしくお願いします。

考察と徹底解説:「主題」は母親からの自立です!

「図書館奇譚」の主題は「母親からの自立」です。

作中でも、

・母親に買ってもらった靴の心配

・夕食を作ってくれる母親の心配

主人公はしきりにこんなことを心配していました。

実際本文から引用してみると…(↓)

  • 「でも夕食までに帰らないと母が心配しますから」(P 14)
  • 「お願いだから教えてください。家では母が心配してるんです」(P 28)
  • 「もう夕食の時間だ。家では母親が心配しているに違いない」(P 31)

いかがですか?

主人公は、母親の心配ばかりし、自立していないことを伺わせます。

さて。

ではそんな主人公は、ラストでどうなったでしょうか?

図書館奇譚ラストの場面ではこんな記載がありました(↓)

そしてぼくらは朝食を食べた。むくどりも平和そうに餌をついばんでいた。まるでなにごともなかったように。靴をなくしたことについても母親は何も言わなかった。母親の横顔はいつもよりほんの少しだけ悲しそうに見えた。でもそんな気がしただけかもしれない。

村上春樹「図書館奇譚」P 69より引用

そして最後に母親は死んでしまいます(↓)

先週の火曜日、母親が死んだ。ひっそりとした葬儀があり、ぼくは一人ぼっちになった。

村上春樹「図書館奇譚」P 70より引用

この記載からわかることは、ズバリ母親からの自立です。

  • 図書館に行く前→何度も母親のことを心配
  • 図書館に行った後→母親と何事もなく過ごした後、母は死亡

つまり図書館に行ったことで、母親から自立したと思われます。

これは「図書館」の記載方法、羊男、老人の行動からもわかります。

 

図書館奇譚の考察と解説②地下牢や羊男・老人・美少女のメタファーは?

一方、地下牢は「家庭」に喩えられると思います。

子供って家庭以外の行き場がありませんよね。

図書館も、その家庭と似ていて、

  • 一定期間必ず閉じ込められる
  • 3食の食事とオヤツがついてくる
  • 本を読んで勉強しなければいけなかった

いかがですか?

「閉鎖空間」、「食事」「勉強」。

この環境は家庭とそっくりではないでしょうか?

では羊男や老人、美少女のメタファーはなんでしょうか?

これは、特定の何かを指すものではないと思われます。

どういうことかというと「多義的」という意味です。

・(例えば)自分の内面
・(例えば)お父さん
・(例えば)母親のある一面

こんなことを指すと思われます。

例えば羊男は、

  • ドーナツや食事を運んでくれた
  • 図書館の出口まで案内してくれた

こんなことをしてくれましたよね。

また老人も、

  • 柳の鞭ではたく
  • 毛虫の壺に入れてやる

など怖い一面がありました。

これは、お父さんやお母さんの一面とも言えないでしょうか?

ちなみに同じように解説しているサイトもありました(↓)。

※参考サイト「羊男は何を意味しているか?

このことからも多義的な意味があると言えそうです。

村上春樹「図書館奇譚」関連書籍

図書館奇譚は、全部で4バージョンあります。

1冊目は、1983年に刊行された「図書館奇譚」。

カンガルー日和に収録されています(↓)


カンガルー日和 (講談社文庫)

続いて「村上春樹全作品1979〜1989」にも収録されています。

こちらがバージョン2とされます。


村上春樹全作品 1979~1989〈5〉 短篇集〈2〉

またバージョン3は「ふしぎな図書館」です。

こちらは子供向けの絵本となっています(↓)


ふしぎな図書館 (講談社文庫)

バージョン4はドイツの画家「カットメンシック」挿絵の 「図書館奇譚」。

こちらは、大人向けの絵本となっています(↓)


図書館奇譚

ご覧の通り、4バージョン存在しています。

4バージョンとも文章がまるで違く、村上春樹も読み比べをおすすめしています(↓)

もしできれば読み比べて(見比べて)いただきたいと思う。きっと「同じ文章の内容で、これほどまで違うものか」と、驚嘆されるに違いない。

村上春樹「図書館奇譚」(新潮社版)あとがきより引用

ちなみに当ブログは、新潮社から出版されている、バージョン4から引用させていただきました。

まとめ

いかがでしたか?

今日は「図書館奇譚」に関してまとめてみました。

僕は「パン屋を襲う」についても考察しています。

良かったらそちらもよろしくお願いします。

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ではまた。

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