こんにちは。
彩人です。
今日は村上春樹の「猫を棄てる〜父親について語るとき〜」のネタバレありの感想です。
・あらすじ
・全体的な感想と書評
こんなことを知りたい方向けに書いています。
ネタバレしています。未読の方はご注意ください。

・読書ブロガー
・日本大学文理学部卒業
・年間読書量の1/3が村上春樹
Contents-目次-
ネタバレ注意!村上春樹「猫を棄てる」大まかなあらすじ・書評
あらすじは次の6つから成り立ちます。
- 父親とのエピソード
- 父親の出自(お寺に生まれたこと)
- 父親の趣味・短歌
- 父親と戦争
- 村上春樹の幼少期・母親のこと
- まとめ(あとがき)
こんな内容になっています。
ちなみに村上春樹が言いたかったことは一つだとされます。
該当箇所を抜粋すると…
いずれにせよ、僕がこの個人的な文章において一番語りたかったのは、ただひとつのことでしかない。ただひとつの当たり前の事実だ。それは、この僕はひとりの平凡な人間の、ひとりの平凡な息子にすぎないという事実だ。
(「猫を棄てる〜父親について語るとき〜」P94より引用)
この本の中で語りたかったことはただ一つ。
この僕はひとりの平凡な人間の、ひとりの平凡な息子にすぎない
ここが本のポイントといえそうです。
村上春樹は「職業としての小説家」でもこちらを強調しています。
今ではノーベル賞有力者で売れっ子作家。
でもご家庭は平凡だったそうです。
僕は平凡な家庭で育った平凡な息子
これを改めて伝えたかったのかもしれません。
ネタバレ注意!村上春樹「猫を棄てる」詳しいあらすじ・書評
続いて、詳しいあらすじを見ていきます。
- 父親とのエピソード
- 父親の出自のこと(お寺に生まれたこと)
- 父親の趣味・短歌
- 父親と戦争
- 村上春樹の幼少期
- まとめ
以上があらすじの要約でした。
それを簡単ながら見ていきます。
父親との間で一番思い出に残っているエピソード
お父様との間に一番思い出に残っているエピソード、それは「猫を棄てる」エピソードだったそうです。
当時、何らかの理由で飼いきれなくなった猫。
それを海まで棄てに行くエピソードでした。
家族旅行の思い出でもなく誕生会の思い出でもなく、猫を棄てに行くエピソード。
なんだか不思議な感じがしました。
父親の出自のこと
家柄も平凡だったと綴られています。
お父様の実家は京都のお寺。
名門そうですが「清水寺」とかではありません。
ごく平凡な京都のお寺さん。
あえて父親の出自を明かすことで平凡さを強調したように感じました。
父親の趣味・俳句について
またお父様の趣味は俳句だったそうです。
俳句雑誌にも記載される腕前だったんだとか。
『鳥渡るあああの先に故郷がある』
『兵にして僧なり月に合掌す』
(「猫を棄てる〜父親について語るとき〜」P44より引用)
素人目線ではありますが、こちらも「平凡」という感じがしました。
むしろ村上春樹の短歌の方が印象に残ります。
短歌は「一人称単数」の『石のまくらに』という作品に収録されています。
こんな感じでした↓
午後をとおし / この振りしきる / 雨にまぎれ
名もなき斧が / たそがれを斬首
村上春樹「一人称単数」より引用
俳句と短歌の違いはありますが村上春樹の方が鋭い気がします。
父親と戦争について
父親の戦争についての記載もあります。
中国へ派兵されたそうで、部隊名から派兵年まで詳しく語られています。
南京攻略に関わったのでは…と心配されていましたが、関わっていなさそうでした。
村上春樹の幼少期のこと
ラストになるとご自身とお母様のことも語られています。
お母様はそこそこの人気教師。
教え子に田辺聖子がいたことも明かされています。
またご自身の学業成績についても触れられます。
そこそこの成績を取っていたものの、学業は不得手だったとか。
そしてそんなことをご両親は快く思っていなかったそう。
僕は庶民的な作家さんだなと感じました。
全体的なまとめとして
あとがきで村上春樹はこんなことも書いています。
僕がこの文章で書きたかったことのひとつは、戦争というものが一人の人間ーごく当たり前の名もなき市民だーの生き方や精神をどれほど深く変えてしまえるかということだ。
(「猫を棄てる〜父親について語るとき〜」P 99より引用)
戦争の記述が多かったのはこんな理由だったのかもしれません。
・軽い反戦的なメッセージ
こんなことを伝えたかったのではないでしょうか。
まとめ
ここまでお読みくださりありがとうございました。
この短編集のテーマは「平凡な家庭」と「戦争」だったように思います。
・お母様
・猫
・村上春樹
・戦争に駆り出された市民
これらの名もなき人と第二次世界大戦。
こちらが淡々と綴られています。
面白い、つまらないというよりは「へえ、そうなんだ」という印象。
落ち着いた文体で過去を顧みられています。
全体で100ページあまり。
これだけ?という物足りなさは不思議とありませんでした。
村上春樹好きなら一度は読んでおきたい一冊です。
ぜひ手に取ってみてください!
また僕は他にも『村上春樹「一人称単数」の考察」』についても書いています。
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ではまた。