こんにちは。
彩人です。
「村上春樹の『蛍(螢)』よくわからなかったな~」
今日はこんな方向けに記事を書いています。
僕は年間読書量の1/3が村上春樹。
そんな僕が考察しています。
よろしくお願いします。
・読書ブロガー
・日本大学文理学部卒業
・年間読書量の1/3が村上春樹
村上春樹「蛍(螢)」のあらすじと徹底考察!
村上春樹「蛍(螢)」の概要とあらすじ
まず村上春樹「蛍」とはこんな作品です(↓)
- 初出:中央公論1983年1月
- 収録:「螢・納屋を焼く・その他の短編」
- 長編小説「ノルウェイの森」第二章、第三章の下書きとなった
またあらすじは、こんな作品でした(↓)
主人公・僕は極めて右翼的な経営者が運営する寮に入っています。
ところが五月の日曜日の午後。「僕」は高校の時知り合いだった「彼女」と再会します。ちなみにその彼女と初めて会ったのは、高校二年生の春。自殺した同級生が付き合っていた彼女でした。彼女に「同居人」の話しをすると久しぶりに笑ってくれ、以来、月に1度か2度会う付き合いとなりました。
ところが彼女の二十歳の誕生日。僕は彼女に昔付き合っていた同級生の話を持ち出してしまいます。そこから急速に関係は悪化。京都の山の中の療養所で過ごす、さよならという手紙をもらいました。
ラスト。寮の同居人が螢をくれます。「女の子にでもあげたらいい」と言われましたが、寮の屋上で放してあげて物語は終了しました。
ではここから作品の考察に入ってみたいと思います。
村上春樹「蛍(螢)」の徹底考察
「蛍」の主題は「喪失」です。
実際、物語も彼女と出会ってから彼女を失うまでの物語でした。
なので、主人公がいかにその喪失から立ち直るかが読みどころです。
ではどのような過程を辿って、「出会い〜別れ」までを経験したのでしょうか?
順番に見ていきたいと思います。
彼女との出会いはこんな感じでした(↓)
僕と彼女は中央線の電車の中で出会った。僕にも彼女にもべつに予定はなかった。降りましょうよと彼女が言って、我々は電車を降りた。
村上春樹「蛍」P 22より引用
こんな風に電車の中で突然、再会したことが出会い。
そして関係が進みます(↓)
僕はそれからも月に一度か二度会ってデートをした。たぶんデートと呼んでいいのだと思う。
村上春樹「蛍」P 32より引用
しかし別れは突然でしたよね。
彼女と寝た後、彼女と連絡が取れなくなってしまいました(↓)。
一週間かかっても電話はかかってこなかった。彼女のアパートは電話の取り次ぎをしてくれなかったので、僕は長い手紙を書いた。
村上春樹「蛍」P 41より引用
すると彼女からは、「京都の山の中で療養する、さよなら」という返事が返ってきます。
特に別れた理由は明かされませんでした。
ただ作中にこんな記載があることから、本気で「僕」を好きではなかったことが伺えます(↓)
彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。彼女の求めているのは僕の温もりではなく、誰かの温もりだった。
村上春樹「蛍」P 33より引用
また出会った時には、こんな会話もありました(↓)
ここからも僕と付き合う意思がなかったことが伺えます。
「私ってそういうのに向いてるかしら?」
「共同生活のこと?」
「そう」
「どうかな。考えているよりは結構煩わしいことも多いもんだよ。細かい規則とかラジオ体操とかね」
「そうね」と言って彼女はしばらく何かを考えていた。
(中略)
「でも、そうするべきじゃないかって時々思うの。つまり……」彼女はそう言うと、僕の目をのぞきこんだ唇を噛みしめた。それから目を伏せた。「わからないわ。いいのよ」それが会話の終わりだった。彼女は再び歩きはじめた。
村上春樹「蛍」P 22より引用
この会話から「当初から共同生活を送るつもりだった」ことが伺えないでしょうか?
「そうすべきじゃないかって思うの……」のあとが明かされていないからです。
しかし、たまたま僕と出会ってしまい療養生活が延期された…。
なので「僕との別れ」は必然だったとも取れます。
「蛍」は何の象徴?
では「蛍」とは何の象徴でしょうか?
僕は「彼女」の象徴だと思います。
実際、蛍に関してはこんな描写があります(↓)
瓶の底で螢は微かに光っていた。しかしその光はあまりにも弱く、その色はあまりにも淡かった。(中略)蛍は死にかけているのかもしれない。
村上春樹「蛍」P 46より引用
こんな感じで、、
- 微かな光
- 死にかけていた
と、僕の彼女に対する思いと似ています。
でもそんな蛍も最後は、放してあげました。
これは「思いを放った」ことの隠喩ではないでしょうか?
「ノルウェイの森」との繋がりは?
「蛍」の長編、「ノルウェイの森」にはこの続きがあります。
京都まで会いに行ったものの、彼女は亡くなるというラストでした。
また「ノルウェイの森」だと、名前がついています(↓)
- 僕→ワタナベ
- 彼女→直子
- 彼女の元彼→キヅキ
- 同居人→突撃隊
同じテイストの話をより詳しく楽しめます。
結末も少し明るい終わり方でした(↓)。
まとめ
いかがでしたか?
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
僕は他にも「踊る小人」や「納屋を焼く」の考察も書いています。
-
村上春樹「納屋を焼く」考察と徹底解説【初心者にもわかりやすく解説】
こんにちは。 あやとです。 「『納屋を焼く』ってどう読めばいいんだろう?」 今日はこんな方向けに記事を書いています。 僕は年間読書量の1/3が村上春樹! そんな僕が丁寧に考察・解説しています。 よろし ...
続きを見る
良かったらそちらもよろしくお願いします。
ではまた!