こんにちは。
彩人です。
「窪美澄さんの『朔が満ちる』って面白いのかな?」
「窪美澄さんの『朔が満ちる』のあらすじが知りたい!」
今日はこんな方向けに記事を書いています。
僕は窪美澄さんはデビュー以来、ほぼ毎作、読破。
そんな僕が書いています。
よろしくお願いします。
・読書ブロガー
・日本大学文理学部卒業
・年間読書量の9割が小説
窪美澄「朔が満ちる」の大まかな感想とあらすじ
まず「朔が満ちる」とはこんな作品です(↓)
- 2021年7月刊行
- 朝日新聞出版刊行
- 窪美澄17作目の新作
- 「週刊朝日」2019年12月13日号から2020年7月24日号まで連載
大まかな感想は、
- めっちゃ、重い!!
- でもめっちゃ、面白い!!
これに尽きると思います。
ちょっと重すぎかな〜という描写もありますが、僕は直木賞受賞でいいのでは?と思いました。
なので読もうかどうしようか、迷っている方はぜひ手に取ってみてください!
僕はここ5作の窪作品で一番面白かったです。
ちなみにネタバレしない程度のあらすじはこんな感じです(↓)
あらすじ
主人公・横沢史也は13歳の時、父親殺害を決意。斧で父親を半殺しにします。ただ、父親はどうしようもない「飲んだくれ」。そうされても仕方ありませんでした。
大きくなった主人公は「人殺し」(未遂)をしたことと、幼児虐待を受けたことの心の傷を負っています。そしてその傷が節々で疼きます。でもそれを救ってくれたのは看護師のある女性でした。
窪美澄「朔が満ちる」の詳細な感想とあらすじ
「朔が満ちる」前半までの感想とあらすじ
ここから先は完全にネタバレします。
未読の方はご注意ください。
まず、ことの発端は中学生・13歳の時でした。
今だ。また龍の声がする。殺せ。殺せ。
僕の振り上げた斧が父の後頭部にめり込む。
窪美澄「朔が満ちる」P8〜9より引用
こんな風に冒頭は父親の殺害シーンから始まります。
ただし、これは夢。
実際のところは違いました(↓)。
「お酒を飲んで階段から足を滑らせて」
その嘘が事実になった。
窪美澄「朔が満ちる」P10より引用
斧の柄で父親の頭をかち割り、半身不随にした、それを周りが庇ってくれた。
これが実際のところでした。
一方話は、現代に飛びます。
そんな主人公も大きくなり、建築専門のカメラマンとなりました。
でも、殺人未遂を犯したこと、幼児虐待を受けたことで心に傷を負っています。
「子ども、あの男の子、ぜんっぜん笑ってなかったですね」
(中略)
あの子どもも僕のような、年上の男性が苦手な大人になってしまうのではないか、ふと思った。
窪美澄「朔が満ちる」P20より引用
こんな感じでことあるごとに過去を思い出してしまいます。
ただ、そんな主人公にも突然の出会いが訪れます。
喫茶店でこんな出来事があったのです(↓)
「私、好きな人いるんですよ。この人です。」
「なっ!?」
(中略)
看護師が腕を絡めてくる。指と指の間に彼女の指が入り込む。恋人つなぎというやつだ。
窪美澄「朔が満ちる」P107より引用
こんな風に突然、恋人にさせられたのでした。
でも女性も女性で主人公と同じ傷を背負った女性。
そんな境遇も相まり、二人は、徐々に惹かれ合っていきました。
さて。ここまでが前半。
いかがでしたか?
僕は、正直、ここまでは
- あり得る展開
- 窪美澄さんらしい展開
と感じました。
なのであまり読むスピードも上がりませんでした。
でもここから一気に物語は、展開!!
僕はあっという間に読み終えました。
「朔が満ちる」後半の感想とあらすじ
後半全てを書くとかなり長くなってしまうので、大まかに書いてみたいと思います。
ここから残り200ページ余りあります。
①梓と距離が縮まる
②親しくしていたキャバクラ嬢・水希の死
③水希の遺骨を梓と届けにいく
④梓と青森・弘前に行く
⑤梓の過去や生みの親と対面
⑥主人公の過去や両親との対面
⑦主人公の父親の死
⑧梓と結婚、妊娠
こんな感じで物語が展開して行きました。
ポイントは両親との折り合いとの付け方だったと思います。
なぜなら、これらの出来事を通じて、主人公の心は、こう変化しているからです(↓)
「父が今亡くなりました」(中略)
「いいのか……すぐに帰らなくて」
「帰りません。大丈夫です」
即答した僕に吉田さんと境さんは、顔を見合わせる。
窪美澄「朔が満ちる」P282〜283より引用
この描写の前までは、
- 死の間際の父親に枕を押し当てる
- 死にそうな親に斧でとどめを刺そうとする
など、問題が解決したとはとても言えませんでした。
ところが、主人公は母親と梓の気持ちを知ることで問題を乗り越えたと思われます。
例えば、母親の真の気持ちとは、
- 父親と一緒に自分も責任を取ろうとしていた
- 父親を殺さず生かすことで、恨みを晴らしていた
こんな思いを最後に吐露しています。
そしてそれを梓が、こう言ってくれたのです(↓)
「史也さんは十三のときから重荷を背負って生きてきた。今も彼の両肩にはその重荷がのしかかっているんです。(中略)史也さんを守ってくれる人はあなたしかいなかったのではないですか?」
窪美澄「朔が満ちる」P263より引用
こういった直後、主人公はこう言っています(↓)
「もういい……」僕は思わず呟いていた。「もういいんだ」
窪美澄「朔が満ちる」P263より引用
つまり、
- 梓が気持ちを代弁してくれた
- 主人公・史也の真の理解者となってくれた
- 父親に枕を押し当てたことも隠してくれた
こんなことから、両親以上の理解者が現れたと言えないでしょうか?
そして両親との心の問題が、解決したのです。
最後はそんな梓とも結ばれ、ハッピーエンドでした。
「朔が満ちる」とはどんな意味?
ところで題名の「朔が満ちる」とはどんな意味だったのでしょうか?
「朔の意味や由来を解説したサイト」には、こうありました(↓)
「逆方向」や「もとへ戻る」という意味を表す「屰」に「月」を組み合わせて「月が満ち欠けしてもとの状態に戻ること」を表す。
具体的には陰暦の1日目を指す言葉。
このことから僕は、
- 「主人公・史也」の新たな人生1日目(朔)
- 生まれ変わるため、過去との折り合いの終わり(満ちる)
と解釈しました。
なかなか深いタイトルですよね。
まとめ
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
僕は、他にも書評をしています(↓)。
-
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