こんにちは。
彩人です。
「パン屋再襲撃、よくわからなかったな〜」
「パン屋再襲撃をもっとわかりやすく解説してほしい!」
今日はこんな方向けに記事を書いています。
『パン屋再襲撃』って、
- なぜ2回も襲撃したのだろう?
- 呪いや海底火山、ワーグナーの意味は?
- マクドナルドとパン屋は別物だけど大丈夫かいな?
こんなこと、疑問に思いませんでしたか?
今日はその疑問を全て考察してみます。
最後まで読むことで論理的に解説しています。
よろしくお願いします。
村上春樹「パン屋再襲撃」解釈と考察①「なぜ【再】襲撃してしまったのだろう?」
まず「パン屋再襲撃」とは文春文庫から1986年に発売された村上春樹の短編集のことです。
ではなぜ2回もパン屋を襲ってしまったのでしょうか?
その答えは「パン屋を襲う」という小説にあります。
文春文庫の「パン屋再襲撃」だけ見ると一度しか襲っていません。
しかし「パン屋を襲う」にはその前日譚の「パン屋襲撃」の様子が収めれれています。
その時しっかりやり遂げていれば2度目の襲撃はなかったと妻は言っています。
つまり1回目は失敗だったのです。
しっかり襲わなかったので主人公は今も「特殊な飢餓感」に悩まされています。
それでは「特殊な飢餓」とは一体なんなのでしょうか?
パン屋再襲撃解釈と考察②「ポイントは【特殊な飢餓】です」
特殊な飢餓とは何か?
僕はそれをひとつの映像としてここに提示することができる①僕は小さなボートに乗って静かな洋上に浮かんでいる
②下を見下ろすと、水の中で海底火山の山頂が見える
③海面とその山頂の間にはそれほど距離はないように見えるが、しかし正確なところはわからない
④何故なら水が透明すぎて距離感がつかめないからだ(パン屋再襲撃より引用)
ボートに乗って海底火山の山頂が見えるとはなんとも恐ろしい状況。
しかも海底火山との距離感は掴めないと言います。
この飢餓状態(海底火山のような特殊な)が襲っているため、パン屋やマクドナルドを襲撃してしまおうという理屈です。
実際、妻はこんなことを言っています。
「あなたが自分の手でその呪いを解消しない限り、それはたちの悪い虫歯みたいにあなたを死ぬまで苦しめ続けるはずよ。あなたばかりでなく私をも含めてね」
(パン屋再襲撃より引用)
主人公どころか妻まで特殊な飢餓感に襲われていると言います。
では特殊な飢餓感なんてなぜかけられてしまったのでしょうか?
パン屋再襲撃解釈と考察③「海底火山・ボートの意味(隠喩)は何?」
これは僕なりの考察ですが、
・ボート→(ボートに乗って洋上に浮かんでいるような)「不安定」な状態
この隠喩だと思われます。
パン屋をもう一度襲わない限り、この不安定な恐怖状態(特殊な飢餓状態)がいつまでも続くと妻は言います。
そんな恐怖感を持ち続けるより、もう一度パン屋を襲ってしまおうというわけです。
パン屋再襲撃解釈と考察④「呪いってどんな意味?」
妻曰く、それは呪いが掛けられたからだと言います。
そしてこの呪いを解くためにはもう一度、パン屋を襲えと力説します。
「もし君が言うようにそれが呪いだとしたら、僕はいったいどうすればいいんだろう?」
「もう一度パン屋を襲うのよ。それも今すぐにね」
(パン屋再襲撃より引用)
妻にこう言われています。
ちなみにどこでその呪いにかかってしまったのかと言うと1回目の「パン屋襲撃」の時にかかったとされています。
うまく襲撃できなかった呪いなのか、「パン屋襲撃」の時に主人がかけたと言っている呪いなのかはあまり説明されていません。
1作目「パン屋襲撃」ではこんな記載もあります。
「なるほど。そういうことならこうしようじゃないか。君たちは好きにパンを食べればいい。その代わりワシは君たちを呪ってやる。それでかまわんかな」
「呪うってどんな風に?」
「呪いはいつも不確かだ。地下鉄の時刻表とは違う」
(パン屋を襲うより引用)
こう解説されています。
呪われたくないので主人公は「ワーグナー」を聴きます。
つまり「ワーグナーを聴くこととの「交換条件」でパン屋を襲ったことにした」のです。
この時、パン屋主人を「やっちまえば」呪いにはかけられなかったと思われます。
パン屋再襲撃解釈と考察⑤「なぜワーグナーなんて聴かせたんだろう?」
なぜしっかり襲撃しなかったの?
実は1作目「パン屋を襲う」でパン屋の亭主は交渉を持ち出したからです。
「そんなに腹が減っているんならパンを食べればいい」
「でも金がないんです」
「金はいらないから好きなだけ食べりゃいい」
「いいですか?僕たちは悪に走っているんです。だから他人の恵みを受けるわけにはいかない」
(パン屋を襲うより引用)
この時にしっかり襲っていれば襲撃は一度で終了しました。
ところがパン屋の主人は次のように交渉を始めます!
「君たちはワーグナーが好きか?」
「いや。ぜんぜん」
「もしワーグナーの音楽にしっかり耳を傾けていればパンを食べさせてあげよう」
(パン屋を襲うより引用)
こんな交換条件でした。
その条件を飲んでパンを手に入れたというわけです。
こんな理由から一度目は、襲撃というより交換条件を飲みました。
パン屋再襲撃解釈と考察⑥「なぜマクドナルドを襲ったのだろう?」
マクドナルドはパン屋じゃない!
これは本文の中でも言及されています。
「マクドナルドはパン屋じゃない」と僕は指摘した。
「パン屋のようなものよ。妥協というものもある場合には必要になる」
(パン屋再襲撃より引用)
こう説明されています。
でも深夜2時に開いているパン屋はありませんでした。
なのでマクドナルドで妥協したというわけですね。
では「呪い」は解けたのでしょうか?
ここで冒頭の海底火山の話に戻ります。
マクドナルドを襲った後の「海底火山の様子」はこんな風に結ばれています。
一人きりになると、僕はボートから身を乗り出して、海の底をのぞきこんでみた。でもそこには海底火山の姿は見えなかった。水面は静かな空の青みを映し、小さな波がパジャマのようにボートの側板を柔らかく叩いているだけだ。僕はボートの底に身を横たえて目を閉じ、満ち潮がしかるべき岸辺に運んでいってくれるのを待った」
(パン屋再襲撃より引用)
この描写から海底火山(=特殊な飢餓)はなくなり、落ち着いていることがわかります。
つまり「パン屋再襲撃」は成功したのです。
良かった良かった(?)
まとめ
いかがでしたか?
結構、深いことを言っていますよね。
僕は他の作品の考察もしています。
良かったらよろしくお願いします。
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ではまた。