こんにちは。
彩人です。
「村上春樹の『東京奇譚集』を考察しているサイトってあるかな?」
今日はこんな方向けに記事を書いています。
僕は年間読書量の1/3が村上春樹。
そんな僕が解説&考察しています。
よろしくお願いします。
・読書ブロガー
・日本大学文理学部卒業
・年間読書量の1/3が村上春樹
村上春樹「東京奇譚集」の概要〜全体的な解説と考察〜
まず、村上春樹の「東京奇譚集」とはこんな作品です(↓)
- 新潮社より刊行
- 2005年9月発売
- 全5編から成る短編集
- 全5編とも雑誌「ニューヨーカー」に掲載
こんな作品でした。
ちなみにタイトルとなっている「奇譚」の意味は、
- 珍しい話
- 不思議な話
という意味。
なのでこの短編集も全て「不思議な」ストーリーを集めています。
また海外評価も高く、全5編が雑誌「ニューヨーカー」に掲載。
「Blind Willow, Sleeping Woman」という短編集にもなっています。
ではそれぞれどのような作品なのでしょうか?
詳しく見ていきたいと思います。
村上春樹「東京奇譚集」の解説・考察・感想・あらすじ①偶然の恋人
まず第1話目「偶然の恋人」とは、こんな作品です(↓)
- 初出「新潮」2005年3月号
- 冒頭のエピソードは「やがて哀しき外国語」でも読める
またあらすじは、こんな感じの作品となっています(↓)
<あらすじ>
語り始めでいきなり「僕=村上春樹」が登場します。
そこで村上春樹が経験した不思議な話を2つ紹介。
そしてそこから続くストーリーも実際あった話だと語っています。
主人公「彼」はゲイのピアノの調律師。
彼には3歳年下のボーイフレンドがいます。
彼は火曜日になると神奈川にあるショッピングモールの喫茶店で本を読むことが趣味。
そこで彼はディッケンズの「荒涼館」を読んでいます。
すると隣に座った女性も同じ「荒涼館」を読書。
そのことがきっかけでちょっとした仲になりました。
しかし彼はゲイのため、それ以上は、仲良くなれず。
最後に彼女と姉の不思議な話を聞き、物語は終了しました。
こんな感じのストーリー。
ではこの話は、何のために書かれたのでしょうか?
僕は、
「これから語る4編はフィクションだけど、実際起こりえる」
ことの示唆なのかな?と読みました。
なぜなら以降は、猿が喋ったり、石が動いたりと不思議な話が多いから。
なので冒頭で実話を交ぜ、フィクションとの壁を薄くしたのではないでしょうか?
僕はそう読みました。
村上春樹「東京奇譚集」の解説・考察・感想・あらすじ②ハナレイ・ベイ
続いて2話目、「ハナレイ・ベイ」とはこんな作品です(↓)
- 初出「新潮」2005年5月号
- 2018年、吉田羊主演で映画化
- 2009年自選連作短編集「めくらやなぎと眠る女」収録
そして、あらすじはこんな感じとなっています(↓)
<あらすじ>
主人公・サチは、ハワイのハナレイ・ベイで息子を失くします。
その時、息子は19歳。
それ以来、サチは息子の命日前にハワイを訪問しています。
サチはある日、ヒッチハイクをしている日本人男性2人に遭遇。
その後、その男性2人とちょっとした仲になりました。
そして彼らから、片足を無くした日本人男性の情報をゲット。
しかしサチには、そのような男性を見つけることが出来ず。
その後、日本でもヒッチハイクをしていた男性と会い、話は終了しました。
こちらは村上春樹、8年ぶりの映画化作品。
「ノルウェイの森」以来の映画化作品となりました。
そして読みどころとしては、
「みんなには見えて、自分だけには見えない物」。
自分だけ、なぜかちょっと寂しい思いをしてしまいます。
そんなお話でした。
でもそういう「理不尽さ」って、人生につきものですよね(↓)
- 自分だけ病気になる
- 自分だけいじめられる
このような理不尽さを小説で表現したのかな?と僕は読みました。
村上春樹「東京奇譚集」の解説・考察・感想・あらすじ③どこであれそれが見つかりそうな場所で
3話目「どこであれそれが見つかりそうな場所で」とは、こんな作品です(↓)
- 初出「新潮」2005年5月号
- 作中に出てくるミスタードーナッツの商品名は存在しない
またあらすじはこんな感じの作品となっています(↓)
<あらすじ>
こちらは夫の「失踪」をめぐる物語。
依頼者の夫はメリルリンチに勤め、タワーマンションに住んでいます。
ところが同じタワーマンションに住む母親の元へ向かう途中に夫は行方不明に。
そこで探偵をしている主人公に依頼が入りました。
しかしなぜか主人公は、料金を受け取らず。
そして最終的には、後日、全く別の場所で夫は発見されたのでした。
こんな感じの消失をテーマとした作品。
ただ、村上作品にはこういった「消える系」の話が多いんですよね(↓)
- 象の消滅
- 納屋を焼く
こんな感じで突然、何かが消えてしまう話がちらほら。
この流れから、本作も執筆されたのかな?と僕は思いました。
ただ、他作品と違うところは、消滅した人が発見されるところ。
本作でも20日後に夫は発見されました。
そういった他作品にはない「発見」も一つの読みどころかと思います。
村上春樹「東京奇譚集」の解説・考察・感想・あらすじ④日々移動する腎臓のかたちをした石
続いて4話目「日々移動する腎臓のかたちをした石」とはこんな作品です(↓)
- 初出「新潮」2005年6月号
- 2000年発表の「蜂蜜パイ」と少し似ている
またあらすじは、こんな作品となっています(↓)
<あらすじ>
淳平は16歳の時、父親から「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない。それより多くもないし、少なくもない」と言われます。
それ以来、その言葉が彼を付きまとう日々。
女性とちょっとした仲になる度に、そのことを自問していました。
その後、31歳の時に彼は「キリエ」という女性と知り合います。
淳平は、彼女に自分が小説家であることを告白。
「日々移動する、腎臓の形をした石」の小説を書いているのだと言います。
しかしやがてキリエと離別。
そしてある日。
タクシーに乗っていた時に、キリエと思しき女性のラジオを視聴します。
すると「日々移動する、腎臓の形をした石」のストーリーが勝手に動いたのでした。
こんな不思議なストーリー。
こちらも「失われたものの再発見」という内容でした。
キリエを失った途端、課題となっていた小説のストーリーが動き出したのです。
ちなみにこちらは「蜂蜜パイ」という短編とそっくり。
何か奇妙なつながりを僕は感じました。
ただそれ以上、僕は深読みはせず。
「面白いな」と感じたまま、読了しました。
村上春樹「東京奇譚集」の解説・考察・感想・あらすじ⑤品川猿
ラストの「品川猿」とはこんな作品です(↓)
- 書き下ろし作品
- 2020年「文學界」に続編「品川猿の告白」を発表
またあらすじは、こんな作品となっています(↓)
<あらすじ>
ホンダに勤める安藤(大沢)みずきは、1年前から自分の名前を思い出せなくなります。
そのため、ブレスレットに自分の名前を彫る始末。
しかしそれでも症状は良くならず。
仕方なく、区のカウンセリングの受診したのでした。
そこで、思いがけない思い出を発掘。
それはかつて松中優子という女性のネームプレートを預かったことでした。
しかしそのネームプレートを盗んだのは「猿」でした。
こんな感じのストーリー。
とてもユニークですよね。
なんと猿が人間と話したりします。
しかしなぜこんな不思議な話を書いたのでしょうか?
僕は「これは完全フィクションである」という強調なのかな?と感じました。
なぜならここまでは、現実的なストーリーだから。
実際に起こりそうなストーリーでした。
なのでここで改めて、SF的な話を持ち出したのではないでしょうか。
あくまで後半4話は、フィクションであることを強調するためです。
ちなみにこの後日談「品川猿の告白」は別ブログにも掲載(↓)
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まとめ
いかがでしたか?
今日は「東京奇譚集」について考察して見ました。
僕は他にもいろんな村上作品を考察しています。
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